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薬剤師研修支援システム

超高齢化社会への薬剤師の取組

2013年11月
厚生労働省大臣官房審議官(医薬担当)
成田昌稔

 

 2020年の夏、東京でオリンピック、パラリンピックの開催が決定しました。前回の東京オリンピックが開催されたのは、49年前、1964年です。海外から多くの選手や関係者、観戦客、観光客が来日し、トップアスリートの競技だけでなく、戦後、約20年の日本の社会、経済を世界に見ていただくこととなった大イベントでした。

 

 さて、その頃の我が国の社会について平均寿命、人口構成で見てみると、1965年の平均寿命は、男性67.74 歳、女性72.92 歳、65歳以上の高齢者は733万人、総人口の7.1%、でした。現在は、2012 年の数字ですが、平均寿命が男性79.94 歳、女性86.41 歳となり、65歳以上の高齢者は、本年、初めて3,100万人を超え、25%となり、オリンピックの2020年には、約3,600万人、約30%に、さらに2060年には、約40%と予測されています。この間に主要国を抜いて、世界有数の高齢・長寿社会の国になっています。

 

 今、日本は世界に類を見ない急速な少子高齢化の進行の真っ只中にあり、また、再生医療等の画期的な科学技術の進歩、国際化の進展など、社会、経済を取り巻く環境の大きな変化の中にあります。日本は、必然的に世界の国々が直面することとなる急速な少子高齢化の進行、超高齢化社会等の課題に、真っ先に取り組み、世界に先駆けて解決することが求められています。 さて、私たち薬剤師には、この超高齢化社会に対し、薬剤師として、そのスキルにより、どのような取組が出来るでしょうか。いくつか、紹介したいと思います。

 まず、薬学というサイエンスに基づいたファーマシューティカルケアを、入院、在宅に関わらず、高齢者、患者に提供していくことです。このためには、他の医療関係者との連携、いわゆるチーム医療としての取組を進めることであり、薬剤提供だけでなく、情報提供、薬物治療の設計、確認等も薬剤師の重要な役割です。

 2点目には、セルフメディケーション、セルフケアの中心的役割として、薬物治療だけでなく、介護や食事、運動療法のエビデンス等の健康情報の提供を通じ、生活者への予防、健康管理の支援への取組です。

 3点目には、日本の数多い医薬品シーズについて最先端技術により迅速な実用化を進め、世界最先端の医療等が受けられるようにすること。基礎研究、開発研究、承認審査、生産、品質製造管理、市販後の安全対策、育薬、レギュラトリーサイエンスの推進等であり、薬のライフサイクルに渡っての薬剤師スキルの発揮です。

 

 薬剤師は、今、28万人。6年制を経た薬剤師がどんどん加わってきます。これらの取組には、日頃の研修、研鑽が重要であることは言うまでもありません。2020年、薬剤師のスキルによる高齢化に対応した社会を築いていきたいものと思います。東京オリンピック、パラリンピック開催まで、残すところ7年を切っています。