戻る

薬剤師研修支援システム

pH試験紙 

2017年3月
専務理事 浦山 隆雄

 

   小学生の時、リトマス試験紙に出会った。誰でも知っていると思うが、赤と青の2種類で、酸性かアルカリ性かがわかるというものである。科学雑誌の付録に付いてきたから、いろいろな液体に試験紙を浸してみた記憶がある。しかしながら、家の中あるいは周囲にあるものは、食酢を除いてはたいてい中性のものだから、あまり色の変化が見られず、期待外れだったはずである。

   pH試験紙に出会ったのは中学生か高校生の時である。リトマス試験紙よりも液性が詳しくわかるので、嬉しかった。この頃には、試験紙を試験液に浸すのではなく、洗滌したガラス棒で採取した試験液を、試験紙に付けるということを習った。さすがに何でも付けてみるという年齢ではなかったが、今考えると、家の内外の液体を試してみれば思いがけない発見もあって面白かったかもしれない。

   試験紙とは少し異なるが、液性によって色が変わるものには指示薬もある。医薬品の定量法は、現在では標準品を用いた液体クロマトグラフィーによるものが主流であるが、以前は滴定法が広く用いられていた。今でも、日本薬局方に収載されている医薬品の定量法として、ある程度滴定法が規定されている。その滴定の終了を知る方法の一つとして指示薬があり、フェノールフタレイン、チモールブルーといった名称が思い浮かぶ。大学で、その理論を学んだことも併せ、滴定の終了である当量点が色の変化でわかるというのは興味深かった。

   人間の性状を調べることのできる試験紙があったらどうだろう。

   真摯に努力している人、寸暇を惜しんで勉強している人、奉仕活動をしている人。試験紙に触れてもらうとそれらがわかる・・・。

   薬剤師の専門分野がわかる試験紙があれば、それも便利である。漢方薬に精通している薬剤師、抗癌剤に造詣の深い薬剤師、院内感染防止対策に詳しい薬剤師。患者は、試験紙を持ち歩くことになるだろう・・・。

   生涯学習は自らのために行うもので、その研鑽の証として研修認定薬剤師の認定証がある。生涯学習の成果は、試験紙を付けられて試されるのではなく、自らが示していくものでなければ、認定薬剤師としての真の意義はないであろう。自己研鑽であったものが、診療報酬の一要素となり、位置付けが大きく変わってしまった今、認定薬剤師であることの意義を再認識する時期に来ていると思う。