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薬剤師研修支援システム

キキョウ 

2017年12月
専務理事 浦山 隆雄

 

 大学3年の夏、生薬学の講義で附属薬用植物園の見学をした。薬用植物園とは言っても、薬学部の建物のすぐ横である。見学がどのような内容だったのか記憶がないが、総括的な説明を受け、育てられている薬用植物を見て回ったのだろう。当時Yさんという文部技官がいて、丹精込めて育てていたはずである。

 教室に戻ると、キキョウの根が教卓の上に置いてあった。薬用にするにはほど遠い細い根であったが、花の色に紫と白があり、希望者は持ち帰って良いということであった。紫と白、それぞれ2本くらいをもらったと思う。

 夏休みがきて実家に帰り、祖父が私の持ち帰ったキキョウの根を庭に植えた。その年は茎は伸びたものの、花までは咲かなかったと思う。翌年、茎が伸び、蕾ができて、多くはなかったが紫も白も花が咲いた。その翌年からは多くの花が咲いたが、残念ながら白は2、3年後に育たなくなってしまった。やがて就職して、私は夏の帰省の時の一時期しか見ることはなくなったが、毎年実家では紫色の花がたくさん咲き続けた。

 歳月が過ぎ、実家は空家になった。家屋はもとより庭の草木の手入れもままならなくなり、ほとんど放置状態となって2年後、35年以上咲き続けた花はなくなっていた。

 家屋は今年取り壊した。建物とともに庭木もすべて処分して整地したから、地中にあったであろうキキョウの根も根こそぎ取り払われたであろう。花が咲いていた場所には三十五年物のキキョウ根があったはずである。

 現在、医療の場で広く漢方薬が使用されている。その元となる生薬は、輸入に頼っているとはいうものの、国内栽培の普及も着実に進められている。一方、一般社団法人日本生薬学会と当財団が共同で始めた漢方薬・生薬認定薬剤師制度は、創設から16年が経った。現に認定されている薬剤師は3千人に達している。

 生薬の栽培には、長期間を要する。それを医療の現場で利活用することのできる人材の養成にも時間が必要である。長い歴史を持ち、貴重な財産とも言うべき漢方薬あるいは生薬が有効に利活用し続けられること、そしてそれに薬剤師が参画していけることを願っている。