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薬剤師研修支援システム

ホールピペット 

2018年3月
専務理事   浦山 隆雄

 

 ホールピペットに出会ったのは、大学生になって、教養部での化学の実習のときのように思う。

 量りとる溶液に先端を浸け、上部を口で吸って液体を管内に吸い込むと教えられた。薬学部へ行ってからも、放射性同位元素を含む溶液以外は、同じであった。

 教えられたとおり操作していたが、改めて考えてみれば、危険である。実際、先端が液面から離れ、溶液を口に含んでしまったことも何度かある。薬学部の学生実験で希塩酸を含み、指導していた助手に言うと、「自分も何度も口に入れたが、口を漱ぐしかない。アルカリ溶液より酸の方がまし。」と素っ気なかった。

 私は不器用で、ホールピペットの扱いには慣れることがなかった。溶液を無事吸い上げたとしても、標線に液面を合わせることがなかなかできない。吸い上げては、指で押さえて標線合わせをし、合わせられずに、また吸い上げる。繰り返しているうちに、注意が疎かになって、液を口に入れてしまうこともあった。放射性同位元素を取り扱うときには、安全ピペッターと言ったと思うが、器具を使い、口では吸い上げなかった。標線合わせも楽にできたように思う。なぜ、それ以外のときでも使用しなかったのかとの疑問は、今でも消えない。また、それを使用できないのであれば、水を使った基本的な練習を繰り返し行わせるべきではなかったのかという疑問もある。

 認定実務実習指導薬剤師養成講習会の講義では、おおむね当財団の作成したDVDが用いられている。薬学教育モデル・コアカリキュラムが改訂され、それに沿った薬学教育がなされるようになっていることから、現在それに対応したDVDを作成している。新たなDVDは、本年4月から使用を開始することになる。

 社会の期待に応えられる薬剤師を養成するためには、さまざまな教育や実習が必要であるが、実務実習はその大きな柱の一つである。日頃の薬剤師業務での蓄積に、養成講習会とワークショップで学んだことを加え、高い力量を持つ指導薬剤師が多数輩出することを期待したい。そのために、この新たなDVDの果たす役割は大きい。

 必要な基礎的な訓練を繰り返すこと、さまざまな機器などを使いこなすこと、それらが相俟って、薬剤師としての基礎的な腕が磨かれるのであろう。学部で学んだことを、適切な指導者の下に実務実習で実践することで、期待に応えられる薬剤師が誕生していくことを信じている。