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薬剤師研修支援システム

「よく似た名前の薬」はどうすればよいのか

2011年11月
日経BP社 日経ドラッグインフォメーション編集委員 北澤 京子

 

 厚生労働省の医薬品・医療機器等対策部会は、医療ミス、中でも医薬品や医療機器といった「モノ」に起因するミスについての対策を検討する場として、10年前に設けられた。私は医療現場を取材する立場、そして医療を受ける立場から、この部会に委員として参加している。

 

 ミスを起こしやすいと何度も指摘されているにもかかわらず、相変わらず報告されるのが、よく似た名前の薬を間違えて処方、投薬してしまったというミス。今年8月に開催された部会でも、「ノルバスク」を処方すべきところ、間違えて「ノルバデックス」を11カ月にわたって処方したという事例があった。

 

 この事例では、外来を臨時に担当した医師Aが、前医からの紹介状に基づいて、血圧の薬であるノルバスク(5mg)を処方しようとしたが、誤って乳癌の薬であるノルバデックス(20mg)を1週間分処方した。以後の診療を担当した医師Bは、前医でノルバデックスが追加処方されたものと勘違いし、そのまま処方を続けた。誤処方の原因は、医師Aがノルバデックスをノルバスクの後発品と思い込み、薬効や用量の確認を怠ったこと、さらに医師Bも前医からの紹介状を改めて確認しなかったことだった。

 

 単に「ノルバスクとノルバデックスは名前がよく似ているから間違えないように」と医療従事者に知らせるだけでは、対策として不十分(厚労省やメーカーは既に何度も注意喚起を行っている)。名称の似ている薬が2種類ある場合はどちらかが名称を変更する、後発品は既存のものも含めて一般名に統一する(「ノルバスク」の後発品は商品名に「ノルバ…」を使わない)といった対策が考えられるが、企業が商品名を変更するのは容易なことではなく、実際に変更されたのはサクシン→スキサメトニウム、メテナリン→メチルエルゴメトリンなど数えるほど。企業頼みの対策には限界がある。

 

 処方時のオーダリング画面に薬の名前と適応症を同時に表示して、医師が薬の適応症をチェックする、さらに、処方箋に患者の病名を入れておき、薬剤師が適応外処方をダブルチェックするというのはどうだろう。もちろんこうした方法にも限界はあるかもしれないが、乳癌ではない患者にノルバデックスを処方、調剤するというミスは防げそうだ。

 

 薬を最終的に患者に渡す役割を担っている薬剤師の皆さま、「よく似た名前の薬」を間違えないためにどうすればよいか、これぞという対策をご提案ください!