2012年1月
理事長 豊島 聰
2012年は希望のある飛躍の年に
昨年、日本は東北大震災、福島原発事故に続き秋には大型台風による水害と次々に大きな災害に襲われました。これら想定外ともいえる大震 災や原発事故は、大地震に伴う津波や原発事故に対する認識の甘さを喚起し、昨年を発想転換すべき重要な年にしたと思います。一方、世界的 にもギリシャの財政危機に端を発したユーロ圏内の金融危機が世界的な金融不安へと連動し、不安定かつ不安な年となり、これまでの考え方を 転換する必要に迫られています。いずれにしても昨年には、大きな転換点を迎え、今年はこれまでを省みて、将来を見越した希望の年にしなけ ればならないと思います。
薬学教育6年制の初めての薬剤師が本年4月には誕生し、日本の薬剤師も本年は転換点を迎えたと言えます。この新しい教育を受けた薬剤師へ の社会的期待は大きいと思いますが、実務で教育の成果を生かすことができなければ6年制にした意義がありません。実務能力を磨くためには 当人が自覚を持って努力をする必要がありますが、先輩たちの後ろ姿をみて学ぶことも重要です。先輩薬剤師には、後輩を社会の期待にこたえ られる人材に育ててもらいたいと思います。近年、高齢化社会を迎えて、薬剤師の期待される役割はますます重要になってきています。医療 チームの一員、特にくすりの専門家として、医薬品の適正使用にいかに役割を果たしていくか、あるいは在宅介護にどのような役割を果たして いくかなどが考えられます。例えば、医薬品の適正使用での役割について、「薬害再発防止のための医薬品行政等の見直しについて(最終提 言)」中に次のような記述があります。"患者に対する副作用情報の普及・啓発や適正使用の推進のため、国、医療関係者、産業界が、情報提 供に関する要請に応え、それぞれの役割に応じて、患者向け情報提供資材の充実を図るなど、患者とのリスクコミュニケーションを円滑に実施 する体制を構築すべきである。" 最近、病院(医師)によっては医薬品の適正使用について薬剤師に相談するようになってきているようですが、 従来医薬品の使用についての説明は医師が行うことが多かったように思われます。医療チームの一員として薬剤師は、医薬品の適正使用に関し、より積極的に期待される役割を果たしていくべきです。
6年制薬剤師の誕生を機に薬剤師が実務能力をさらに充実・発揮し、本年が、薬剤師にとって希望に満ちた飛躍の年になることを期待しています。