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薬剤師研修支援システム

6年制薬剤師教育第一期生に期待して

2012年8月
昭和大学名誉教授 辻 章夫

 

 薬剤師教育修業年限の6年制が議論されてから半世紀を経て6年制薬剤師の国家試験が実施された。厚生労働省の発表によれば、6年制卒(国公私合計)の合格率は95.3%の成績であった。78回から94回までの4年制新卒の合格率は80.%台で 、平均85.8%であるの比して10%も高い好成績であった。薬科大学の評価は、客観的な数値で表される国家試験の合格率で判断される。規制緩和の流れで、次々に薬科大学が新設され、学生・大学の質が懸念されていた中で新設大学4校が上位 10 校中にランクされていた。しかし、厚生労働省発表の資料の合格率は、6年間ストレートに進学し、卒業して受験したものの合格率である。留年を増やせば合格率を向上させることができる。入学時の学生数と受験者数を比較することにより6年間での留年率を算出することができる。10% 以下の大学はわずか3校で、10~20% 台が14校、20~30% 台が多く、40%以上の大学が10校もあり、最低の大学は76%も留年している。新卒の合格率が99.8% で上位10校中にランクされた新設大学の中にも留年率が40%の大学があり、入学者数に対する合格率による序列では下位であった。

 

 最後の卒業判定試験で国試合格が確実でないものを卒業延期させる大学が多い。学生にとって国試受験の機会を拒否されるのと受験して不合格になるのではまったく違うであろう。6年制薬剤師教育の要であるCBT,OSCEをパスし、長期病院・薬局実務実習も修了した者は国家試験を受験させてよいのではと思う。6年制薬剤師教育第1期生の好成績の国家試験合格率の解析から薬学教育の歪が明らかになった。大学は国家試験の合格率に左右されずに薬剤師教育を行うべきであろう。しかし、これは理想であり、現実をはなれた空論にすぎないのであろうか。

 

薬剤師研修センターはじめ、各大学にも卒後教育システムがつくられ、薬剤師の卒後研修が広がり、医療現場の薬剤師が生涯教育の必要性を認識し、認定薬剤師となり、また、6年制薬学教育の病院・薬局に於ける実務実習の指導を担当する実務実習認定薬剤師となり、6年制薬学教育の実現に寄与した。大学、薬剤師会、病院薬剤師会、薬学会など薬学関連諸団体の総力を結集して実現した6年制薬学教育の第一期生は先輩の薬剤師が築いた道をさらに切り開き、国民から信頼される薬剤師となることを期待したい。

 

 多くの大学は6年制薬剤師教育に直結する4年制博士課程の設置を申請し、4月からスタートした。各大学は、医療分野でリーダーとなる人材を、どのような理念で、どのような方策で育成するかについて8月末までにホームページに公表し、「薬学系人材養成の在り方に関する検討会」に報告する。各大学の4年制博士課程への取り組みに期待している。