2012年10月
一般社団法人 日本病院薬剤師会
会 長 北 田 光 一
医療環境の変化に伴って薬剤師の業務、期待される役割も大きく変化してきました。薬剤師は医師や看護師などの他の医療スタッフとの協働と連携によるチーム医療のなかで、医療の質の向上、医療安全の確保に貢献することが求められています。その背景には、新しい作用機序を有する新規医薬品が医療の現場に登場し、薬物療法の選択肢が広がり、その重要性が増大する一方で、管理や使用が複雑な医薬品も少なくなく、リスクも増大していること、また、個々の患者に最適な薬物療法を提供するための理論と実践技術の著しい進歩などがあり、専門性を活かした医薬品の適正使用、薬学的ケアの実践を介して、個々の患者の病状に応じた効果と安全性の高い薬物治療、質の高い医療を提供する役割が薬剤師に期待されています。今回の診療報酬改定で新設された「病棟薬剤業務実施加算」も、これまでの病棟活動の実績があって実現したことは事実ですが、チーム医療を推進し、勤務医等の負担軽減に向けたこれからの展開に対する期待が極めて大きいことも認識しておく必要があります。
医療の進歩は急速であり、チーム医療のなかで常に薬剤師が薬物治療に主体的に関わり責任を担っていくためには、薬剤師の職能・業務も進化していかなければなりません。信頼される存在となるためには、薬剤師自身の資質向上のための不断の努力が不可欠となります。現在、様々な組織・団体が薬剤師を支援する教育・研修事業を行っていますので、これらを最大限に活用して、各人が目標をもって計画的に自らの資質向上のための、新しい知識や技能の修得のための継続的な努力が必要であります。
また、医療がますます高度化・細分化していますので、医療現場の様々な領域で専門分野をもった薬剤師の必要性も高まっています。変化に伴った医療現場のニーズに対して迅速かつ適切に対応し、医療への貢献を明確にできる活動を展開することが大切であります。そのためには新しい試みも必要になるかも知れません。新たな挑戦が、やがて医療に不可欠な職能・職域の確立へとつながるのだと思います。顔の見える薬剤師から存在感のある信頼される薬剤師へ、薬剤師が医療の中で具体的にどのような役割を担っていくのか、何ができるか、どのような業務を展開していくのかを考え、実践することが極めて重要な時期と言えましょう。