2013年1月
理事長 豊島 聰
近年、チーム医療における薬剤師の重要性が認識され、薬剤の専門家である薬剤師が主体的に参加して行う薬物療法関連の業務領域が拡大してきている。これには、薬事法・医療法の改正や薬学教育6年制実施などの制度改革が大きく関係しているが、病棟業務、地域医療・介護医療などに於ける薬剤師の地道な努力の影響も大きいと考えられる。昨年誕生した実務の即戦力として期待される6年制卒業の薬剤師は、就業してからまもなく1年経過し、業務上自立し始めるころであるが、これからは拡大する業務にも徐々に対応していかねばならなく成るであろう。また、診療報酬改定があり、薬剤師の病棟への配置が進み、これまでより多くの薬剤師が病棟に於ける医療チームの一員としての役割を担うことになった。さらには地域医療・介護医療の中で、薬剤師がチーム医療の一員としてさらに貢献していくことも期待されている。このような状況の下、薬剤師がチーム医療の中で役割を十分果たし、貢献が認められるようになるためには、6年制卒業の薬剤師はもとよりすべての薬剤師が目的意識を持って自己研鑽に励み生涯学習に取り組むことが必須である。
すなわち、薬剤師は、まず現在就業する職域において必要な能力を得るために生涯学習の計画を立て、自己研鑽することにより医療技術を磨き最新医療を学ぶ必要があると考えられる。特に、チーム医療において十分な役割を果たすことのできる薬剤師になるためには医師に於ける総合医に対応する総合薬剤師となるための学習が必要であろう。しかし、あるべき総合薬剤師の姿及び必要な生涯学習の道筋は必ずしも明確になっていない。総合薬剤師の姿とその育成に必要な生涯学習の道筋を示すことは、日本薬剤師会、日本病院薬剤師会などの職能団体および大学・学会等アカデミアの薬学関連組織の責務であり、薬薬学連携による生涯学習プログラムの作成とこれによる総合薬剤師の育成が望まれるところである。
日本薬剤師研修センターは、あらゆる職域の薬剤師の生涯学習を支援するという設立目的に従い、薬薬学連携生涯学習プログラムの作成とそれによる総合薬剤師の育成を考えているが、まず今年は、個々の薬剤師が自己研鑽に励むことにより能力の充実を図り、チーム医療において薬物療法の専門家としての業務遂行を充実させることのできるようになるための“薬剤師充実元年”になってほしいと考える。