2014年7月
文部科学省高等教育局
医学教育課長 袖山 禎之
少子高齢化や国際競争の激化など様々な課題に直面する我が国の社会の中で、大学に対しては、次代を切り開く人材の育成や学術研究、イノベーションの創出等について強い期待が寄せられています。人材育成に関しては、生涯にわたり学び続け、主体的に考え、どんな状況にも対応できる「課題探求能力」を有する多様な人材を育成することなどが期待されています。
薬学教育では、昨年12月に6年制薬学教育のガイドラインである「薬学教育モデル・コアカリキュラム」(コアカリ)を改訂しましたが、この中で、学生が卒業時までに修得すべき資質として「薬剤師として求められる基本的な資質」を設定しており、薬剤師としての心構えや、薬剤師業務に必要な科学力や実践的能力、そして問題発見・解決の能力、生涯にわたり自己研鑽するとともに後進を育てる意欲や態度など、10項目が挙げられています。
改訂されたコアカリでは、各大学で、「基本的な資質」の修得に結びつくように6年間の教育内容・方法を設計することを求めています。この中で、1年次から4年次までの教育を積み重ねた上で5年次に行われる実務実習は、「基本的な資質」の醸成に直接つながるものとして重要性を増しています。
その実務実習については、薬物療法や地域医療への対応などの項目が充実されましたが、内容面で充実させるだけでなく、知識偏重の実習ではなく体験型・参加型の実習を増やし、薬剤師の業務を総合的に学ばせる中で、座学ではなく実社会での学修を通じた「基本的な資質」の醸成につなげることが期待されます。
改訂されたコアカリは平成27年度の入学生から使用され、改訂コアカリに基づく新しい実務実習は平成31年度から行われることになります。全国で約一万人の学生に対して、この新しい実務実習を行う必要があり、それに向けて関係者による準備が始まっています。解決すべき多くの課題がありますが、5年ありますので、一歩ずつ準備が進められていくと考えております。
現場の薬剤師の先生方には、新しい実務実習の実施に向けて、今後、大学や関係団体から働きかけがあると思われます。薬剤師として社会に貢献し将来の我が国を支える人材の育成に、新しい実務実習の受け入れを通じて、是非参画いただきますようお願いします。