2014年12月
専務理事 浦山 隆雄
擂潰機 らいかいき mortar machine
電動乳鉢装置。比較的深い碗形のすり鉢の中を、電動で駆動される2~3本のすり棒が旋転しつつ回転し、供給される粗粒の鉱石などを摩砕して微粉とする。実験室で使われる磁製小型のものから、陶磁器工場などで陶土粉砕に用いられる鉄製大型のものまである(Web検索によるブリタニカ国際大百科事典小項目事典の解説)。
実物を使ったことはないが、大学院生の時に、実験器具や試薬を載せたカタログを見ていて、初めて知った。擂など、書いたこともない漢字であるが、なにやら強い力で捏ね回す感じがする。話は逸れるが、文字を見るともののイメージが湧く漢字には、電纜(でんらん:ケーブルのこと)とか螺子(ねじ)などがあり、おそらく明治時代の人が選定したのであろう、その想像力に頭が下がる思いがする。
話は戻って、擂潰機は、薬剤部では軟膏などを製するために、混和に用いるものである。懸濁剤、乳剤又はゲルからなる外用の皮膚適用製剤は、日本薬局方の製剤均一性試験法の適用除外となってはいるが、混和して、できるだけ均質な製剤とする必要がある。擂潰機は、力の必要な混和作業を代行してくれる、ありがたい助力者である。
製剤は均質なものであることが要求されるが、薬剤師は全体として均質なものである必要はあるだろうか。
昔ながらの調剤の時代、薬剤師は均質である必要があっただろう。誰が担当しても、同じような軟膏ができる。同じような粉薬ができる。それで十分であった。
今はどうだろう。
医療は多様化している。薬剤師の業務の基礎部分は均質であるべきであるが、その上に、専門分野なり、得意分野なりを積み重ねる必要がある。薬剤師教育は六年制となって、学生に対する教育は充実しているが、卒業後は大学が手取り足取りしてくれるわけではない。自ら研鑽を行う。それ以外に、積み重ね部分を作ることはできないと思う。
一昨年度より、研修認定薬剤師の6回目の更新をした薬剤師が輩出してきている。その数、現在約600名である。自らの努力によって積み重ね部分を作り上げてきた方たちに心からの賛辞を捧げたいと思う。
擂潰機という結構大がかりな機械を使っていた軟膏の混和であるが、今は、遠心力を利用した攪拌方式によって軟膏容器の中で混和できるコンパクトな機械ができている。先頃知って、実物を見に行った。技術の進歩は早い。常に研鑽をしていないと取り残されるという実例である。