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薬剤師研修支援システム

自己研鑽は何のため? その輪を広げよう! 

2015年2月
厚生労働省医薬食品局総務課医薬情報室長 田宮 憲一

 

 平成27年度の入学生から適用される新たな「薬学教育モデル・コアカリキュラム」(新コアカリ)において、6年卒業時に求められる基本的な資質の1つとして「自己研鑽」が盛り込まれました。これは、日々進歩する薬物療法や刻刻と変化する社会ニーズに対応するためにも当然のことと言えます。一方で、日本薬剤師研修センターのデータでは、ここ数年、新規の研修認定薬剤師の数が減ってきているのが気掛かりです。そのため、薬科大学・薬学部の先生方には、機会ある度に、学生に自己研鑽の必要性を周知するようお願いすることにしています。

 さて、自己研鑽に励む薬剤師を増やす方策を議論する中で常に話題になるのが、モチベーションをどのように維持していくのか、ということです。よく出るのが「認定の取得が診療報酬で評価されたり、給与に反映されたりする仕組みが必要」という意見ですが、認定の取得と医療サービスの向上との関係が曖昧ですし、報酬だけが手段というのも少し悲しい気がします。では、どうすればいいでしょうか?。

 一つの方策として、現在、日本薬剤師研修センターと日本薬剤師会、日本病院薬剤師会、日本医療薬学会及び日本薬学会が中心となり検討を進めている「総合薬剤師(仮称)認定」構想のように、各団体の研修・認定制度で認定されている薬剤師を対象に、試験などの統一的な基準で評価・認定するシステムを構築することが考えられます。認定資格の見える化と標準化を進めることにより、薬剤師としての一つの到達目標となるだけでなく、患者や他の医療関係者の信頼も得やすくなり、将来的に広告可能な専門性資格や診療報酬上の施設基準等につながる可能性も出てくると思います。

 また、薬剤師が、「研究能力」(「自己研鑽」と同様に新コアカリで基本的な資質として盛り込まれました)を培うことも重要です。日々直面する問題を解決しようとするマインドを持つこと、持てることが自己研鑽のモチベーションにもつながると考えるからです。その意味で、今後の薬学教育では卒業研究に力を入れてくれるものと大いに期待していますが、一方、問題解決に取り組もうとする既卒の薬剤師をどう増やしていくかが、課題となります。

 そこで、一番身近な方策として、本欄をご覧になっている薬剤師の皆さんのご協力をお願いしたいと思います。皆さんは、それぞれ自分なりの目的や問題意識を持って自己研鑽に励んでいるはずです。自分の体験や生涯学習に対する考え方を語ることなどにより、その頑張りが周りの後輩薬剤師の刺激になれば、素晴らしいと思います。 皆さんを中心に、1人、また1人と自己研鑽の輪が広がることを期待しています。