2015年4月
理事長 豊島 聰
先日、久しぶりに会った友人が、非常にすっきりした体型になっていました。減量のためのカロリー制限に、一週間で挫折した私としては、非常に興味があり、秘訣を質問しました。彼は、膝に痛みを感じ、膝の周りの筋肉の強化と体重減少を目指して、カロリー制限に加え膝の屈伸運動を行ったそうです。当初、屈伸は30回がやっとでしたが、今は百回以上、それもダンベルを両手に持って行えるようになったと自慢していました。運動を続けられた理由は、体重減少に加え、屈伸できる回数が増えることが楽しみとなったからだそうです。この楽しいという満足感が持続的なモチベーションとなったことが重要だったわけです。
同様の話を製薬企業の開発の責任者の方から聞いたことがあります。「研究開発担当者の業務に対するモチベーションは、1.昇給、2.昇任、3.有用な医薬品の開発に成功することなどが考えられる。1、2は毎年続くことではないため一過性のモチベーションであるが、3は、開発が成功するまで持続する。また、有能な開発担当者にとって一つの医薬品の開発の成功の有無にかかわらず、次の開発に意欲を燃やすためのモチベーションとなる」というものです。
近年、地域包括ケアシステムでの薬剤師の役割の明確化、薬局の地域の健康拠点としての位置づけなど薬剤師を取り巻く医療環境が変化してきています。薬剤師がこの変化に対応しその職責を十分果たしていくためには、生涯学習が必要であることは、薬剤師は理解していると考えられますが、多忙等を理由に生涯学習に励まない薬剤師も多く存在します。その原因の一端は、生涯学習に対するモチベーションが漠としているからと考えられます。昇任や昇給は薬剤師にとっても魅力的で、短期的には大きなモチベーションとなります。しかし、生涯学習は薬剤師である限り必須であることから、持続的なモチベーションが必要です。それは、地域包括ケアシステムにおいて、チーム医療の一員あるいは地域の健康拠点の薬剤師として、薬剤師の職責を十分果たすことによる社会貢献から生まれてくるのではないでしょうか。患者と向き合って、薬物治療に関して相談、アドバイスし、感謝されることによる満足感、職責を果たしたことによる達成感など薬剤師としての社会貢献を認識することが、持続的モチベーションになると考えられます。短期的モチベーション(昇任や昇給)は、持続的モチベーションに従って生涯学習を行い、職責を十分果たしていけば、付随してくるものかもしれません。その存在意義が問われる今日、薬剤師は持続的なモチベーションを持って、行動することが求められていると思います。