2015年7月
一般社団法人日本臨床腫瘍薬学会 理事長 遠藤 一司
日本臨床腫瘍薬学会(略称:JASPO)は、抗がん薬によるがん薬物療法の効果の発揮、副作用の軽減や未然防止を図るための活動を行っています。学術大会をはじめ、がん薬物療法に関わる初学者向けのスタートアップセミナーやスキルアップを目指したブラッシュアップセミナーなど様々な研修会やワークショップを開催しています。また、日本薬剤師研修センターが主催する「病態と薬理を理解して薬学的ケアを実践する-各種がん-」研修会の企画、運営の支援もしており、これらを通して病院と薬局が連携を図りがん患者が安心安全な薬物治療を行うための取り組みを行っています。
昨年から、病院や薬局に勤務する薬剤師を対象に外来でのがん薬物療法の十分な知識・技術や優れたがん患者サポート能力を備えた薬剤師の認定を行っています。申請には、実務経験が3年以上、日本薬剤師研修センターの研修認定薬剤師など生涯研修認定制度による認定薬剤師であること、60単位以上の研修の履修、外来がん患者のサポート事例10例の提出などいくつかの条件を満たす必要があります。筆記試験や医師・薬剤師による面接試験に合格すると、晴れて「外来がん治療認定薬剤師」として認定されます。
抗がん薬を用いるがん薬物療法は、病院の外来(外来化学療法室など)で行うことが多く、抗がん薬による点滴を受けた後、院外処方せんにより副作用治療薬(支持療法薬)などを院外の薬局で受け取ります。また、最近では経口抗がん薬による治療が増加しており、薬局で抗がん薬を受け取る機会が多くなっています。新しい抗がん薬の注射薬も経口抗がん薬のどちらも治療効果が高くなっていますが、一方で副作用対策も十分に行う必要があります。
通院による抗がん薬による治療では、自宅で副作用が発生する機会が多くなります。そのため、病院や薬局の薬剤師は、薬の効果と合わせて副作用対策についても患者に合わせた丁寧で適切な説明・指導が必要になります。家族が一緒の場合には、その家族にも正しく理解していただく必要があります。副作用によっては、対応の遅れが命にかかわったり患者のQOLを著しく低下させることになります。通院で行うがん治療は、病院だけでは完結しません。外来がん治療認定薬剤師などを中心に病院の薬剤師と薬局の薬剤師が連携をとり情報を共有しながら、がん患者をしっかりサポートしていく必要があります。がんと闘う患者に寄り添う薬剤師が一人でも多く育ってほしいと願っています。