2016年4月
理事長 豊島 聰
毎年のことですが、桜の花の咲く4月には多くの新社会人が誕生します。皆生き生きとして、桜の花の美しさに負けない美しさが感じられます。フレッシュな人材には、いつまでもその活力を維持して社会貢献する人材に育ってもらいたいと思いますが、遠い昔に新社会人であった私自身、自戒の念も込めてこの時期には、社会人としての十分な役割を果たせる活力を取り戻したいと考えてしまいます。社会に出ると、不断の努力により自己の能力を活かす好機にいつかは出会うように思います。他者からの批判など困難な問題にも直面しますが、このような問題の解決も往々にして自分を活かす好機につながります。通常、好機は継続的に努力している人が活かせるものですので、歳をとっても不断の努力は欠かせません。
さて、薬剤師は、従来医療人の中では比較的目立たない存在でしたが、近年の医療環境の変化に伴い、医療チームの一員として明確に認識されるようになりました。すなわち、医療機能の分化・強化ということで地域包括ケアシステムの推進が国の方針として示されたことにより、薬局・薬剤師の役割が明確化されてきました。特に、患者本位の医薬分業の実現に向け、患者の服薬状況を継続的に把握し一元的に管理する「かかりつけ薬剤師」の重要性が明示され、これに対する診療報酬での評価が、2016年度の診療報酬改定項目の中に加えられました。
かかりつけ薬剤師指導料の算定要件をすべて充足することはかなり大変と思われますが、今は、テレビ番組によく登場する予備校の先生の常とう句である「今でしょ」の好機ととらえて、薬剤師はこの機会を逃がすべきではないと思います。かかりつけ薬剤師指導料を算定する薬剤師が満たすべき要件は、「薬剤師として3年以上の薬局勤務経験があり、同一の保険薬局に週32時間以上勤務するとともに、当該保険薬局に半年以上在籍していること」、「薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度等の研修認定を取得していること」、「医療に係る地域活動の取り組みに参画していること」です。これらの要件は、実務経験および研修等から薬局薬剤師が、かかりつけ薬剤師としての役割を果たす十分な職能を有することを要求しています。
この好機を生かすも殺すも薬剤師自身にかかっています。地道な努力により職能を十分果たせる実力を養って、薬剤師がこの好機を活かすことを期待します。