2016年5月
専務理事 浦山 隆雄
私が最初に手にした日本薬局方(ただし、解説書)は第九改正で、大学3年の秋のことであった。大学での日本薬局方の講義は、薬学概論の中に1コマだけあったように思う。とはいえ、内容は薬剤学の教授による薬剤師倫理の話だった。日本薬局方は薬剤師国家試験の範囲ではあるが、そもそも日本薬局方が何であるのか、講義での説明もなく、まったくわからなかったから、学生時代は問題集の過去問を解いた以外、日本薬局方について何も勉強していない。
平成元年、厚生省に入って8年目、課長補佐になったばかりの私の仕事が、第十二改正日本薬局方の編纂であった。作成するのは中央薬事審議会(当時)日本薬局方部会で、私はその事務的な作業の担当である。当時は電子化されておらず、データベースがあるわけではない。収載されている品目についての様々な前例を調べるには、第十一改正日本薬局方(解説書ではなくて官版と言われる本体)を1枚、1枚、ページをめくって見るしかなかった。
手間ではあったが、結果的に何度も通読することになり、日本薬局方が医薬品に関する基盤的事項の集大成になっているということが良くわかった。試験法を整備して収載品目に限らず広く一般に使えるようにしたり、試薬を改良して異なる品目に共通して使えるものにしたりするなど、個々の医薬品の様々な規格を基にしながら、それを普遍化し、基盤化している。気がついてみれば当たり前のことではあるが、内容をほとんど読んでいなかったそれまでの私にはわからなかったことであった。薬局に備えなければならない調剤に必要な書籍として、薬局等構造設備規則及び通知で日本薬局方が示されているのは、そういう基盤的なものを記載しているものだからだろう。
薬剤師の生涯学習において基盤となるものは何だろうか。
薬剤師生涯学習達成度確認試験が、本年から始まる。生涯学習は自己研鑽であり、自己評価が基本であるが、これは、薬剤師・薬学関連団体5団体(日本医療薬学会、日本病院薬剤師会、日本薬学会、日本薬剤師会及び日本薬剤師研修センター)が共同して行う外部評価である。初めての試みであり、生涯学習の基盤の一つになり得るかどうかは、今後の評価を待たねばならないが、新たな取組みとして見守って欲しい。
第十七改正日本薬局方が本年4月から施行された。新たな薬局方とともに、新たに始まるこの制度も歩みを進めたい。