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薬剤師研修支援システム

薬の知識学 ルーツへの回帰 

2016年7月
一般社団法人 日本生薬学会 会長 齊藤和季

 

  「漢方薬・生薬認定薬剤師制度」は日本薬剤師研修センターと日本生薬学会が協力して研修会を実施し、それを通して漢方薬・生薬に関する専門的知識を修得し能力と適性を備えた薬剤師であることを認定する制度です。この制度は、平成12年に開始され、現在までに延べ5400名以上の薬剤師を認定いたしました。

 日本の医師の約90%が漢方処方を使用しているという最近の調査結果があり、もはや漢方薬や生薬を抜きにして日本の医療を語ることはできません。これは、平成13年度に医学教育モデルコアカリキュラムで漢方教育の必須化が行われ、さらに平成18年度からの薬学6年制コアカリキュラムで生薬・漢方教育を必須化したことに象徴されますように、医学・薬学教育において漢方薬・生薬教育に力点をおくという大学教育カリキュラム上の変更があります。しかし、この背景には非常に強い社会的要請があります。つまり、現代社会における原因が明らかでない難病や体調不良などの克服に象徴される、健康寿命の延伸への大きな願いや期待です。最も古い生薬の文献である神農本草経に収載される生薬で最も上位の「君」に分類される上品(薬)のほとんどは、甘草、人参、桂皮などに代表されるようにいわゆる不老長寿薬です。

 生薬学という言葉はもともとドイツ語のPharmakognosieの訳ですが、これはギリシア語で薬を意味するPharmakonと知識や霊知を意味するgnosisから来ています。従って、このPharmakognosie生薬学の字義通りの意味は、「薬の知識学」です。これは生薬学が薬学のルーツであり、天然資源を薬として使う伝承的な暗黙知を、学問的な知識体系である形式知に昇華しようとした試みです。この試みは現代でも継続して行われており、昨年度のノーベル生理医学賞が大村智先生はじめ3人の受賞者による、植物や微生物由来の天然物からの優れた医薬品開発の成果に与えられたことに象徴されます。

 漢方薬・生薬認定薬剤師制度で認定された皆様が、薬学のルーツに思いを馳せながら医療や薬局の現場で先導的な役割を担われ、存分に力を発揮することを期待いたします。