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薬剤師研修支援システム

触媒 

2016年12月
専務理事 浦山 隆雄

 

   私の学部4年生と修士課程の研究テーマは、パラジウム触媒を用いた一酸化炭素挿入反応であった。この反応を利用してラクタムを合成し、カルバペネム系抗生物質であるチエナマイシンの合成をめざすということであった。

   触媒に初めて出会ったのは、小学生の時の二酸化マンガンである。過酸化水素水を垂らすと、酸素の泡が出てくる。過酸化水素はそもそも分解しやすいが、触媒によってそれが促進される。分解すると泡が出るから、反応していることがわかりやすい。小学生の実験としては、適切なものである。

   二酸化マンガンは、小学生向けの科学雑誌の付録にもついてきた。当時の私は、触媒は自分自身が変化せずに化学反応を促進する、ということを知らなかったので、反応させれば二酸化マンガンが減ってしまうように思え、もったいないと大切にとっておいた。何年かして、その付録が押入れから出てきたときには、二酸化マンガンは減っていなかったが、もう一方の試薬である過酸化水素水はただの水になっていて、使い物にならなかった。

   触媒自身は変化しないと習ったのは、高校生の頃だろうか。それを素直に信じていたが、大学の授業では、本質は変化しないものの、劣化するあるいは回収不能になるという。確かに、私が研究で使用したパラジウム触媒は、反応が終わって後処理をすればどこかへ雲散霧消していたし、反応後に回収した触媒を精製して再利用していた人もいた。

   ノーベル化学賞を受賞された鈴木章名誉教授の業績をみるまでもなく、触媒はすばらしい働きをする。が、それを維持するためには、手入れも必要である。

   第1回薬剤師生涯学習達成度確認試験が、本年7月に行われ、415名の合格者が出た。

   出題範囲が広く、参考となる書籍がほとんどない中での約4割という合格率は、しっかりと生涯学習に取り組んでいれば、成果が得られるという証左であろう。今はまだ約400名であるが、着実に増えていって欲しい。そして、こういう方々が中心となって、生涯学習をさらに広めていって欲しいと思う。

   今回の合格者には、常に手入れをして劣化を防ぎつつ、薬剤師の生涯学習において触媒のようなすばらしい働きを期待したい。