2018年6月
一般社団法人 日本生薬学会会長 阿部郁朗
今年度、一般社団法人日本生薬学会の第37代会長を務めさせていただくことになりました。伝統ある本学会の益々の発展のため、微力ながら精一杯力を尽くして参ります。ご支援、ご協力の程、何卒よろしくお願い申し上げます。
本学会は、生薬学に関する学術の進歩および普及をはかり、生薬学関係者・会員の研究成果の発表および研修をする機会を提供し、もって学術文化の発展に寄与すること並びに会員相互の支援、交流、連絡その他会員に共通する利益を図る活動を行うことを目的としています。本学会と日本薬剤師研修センターが協力して研修会を実施している「漢方薬・生薬認定薬剤師制度」は、それを通して漢方薬・生薬に関する専門的知識を習得し能力と適性を備えた薬剤師であることを認定する制度です。この制度は、2000年に開始され、これまでに延べ6千名以上の薬剤師を認定しています。
社会情勢が目まぐるしく変化する中、生薬を取り巻く環境も大きく変化しています。漢方医学の臨床的な有効性に対する評価・再評価が進むとともに、超高齢化時代を迎えるわが国の医療を支える鍵として生薬や漢方には大きな期待が寄せられています。また、生物多様性の遺伝資源に関する名古屋議定書の締結などにより、多様な薬用資源の確保はわが国の将来にとって極めて重要な問題となっています。一方、教育面に目を向けますと、新しい薬学教育制度のもとで、創薬資源であると同時に現代医療の第一線で用いられている生薬や漢方処方を正しく理解し、適正に取り扱うことのできる人材を養成することも重要な課題となります。
生薬学は天然薬物を統括する総合的な学問です。2015年のノーベル生理医学賞を例に挙げるまでもなく、生薬学は人類の健康と福祉に大きく貢献することが出来ます。漢方薬・生薬認定薬剤師制度で認定された皆様が、薬学のルーツに思いを馳せながら医療や薬局の現場で先導的な役割を担われ、存分に力を発揮することを期待いたします。