2018年10月
一般社団法人日本保険薬局協会 会長 南野利久
一般社団法人日本保険薬局協会(NPhA)は、保険薬局を営む法人を会員として2004年に設立した団体です。国民の利益を第一とした薬局の在り方を追求し、薬剤師をはじめとした薬局スタッフの資質向上のため教育研修等を実施しています。
薬剤師が活躍する様々なフィールドの中で、薬局では主として通院で治療を受けている患者の薬物治療を担ってきました。現在では「患者のための薬局ビジョン」に示された方針のもと、在宅で治療を行う患者の訪問や、地域住民の健康増進、未病への対応など、薬剤師が担うべき役割が拡がりつつあります。その分、専門家として豊富な知識経験が求められるということであり、近年の技術革新のスピードに遅れずアップデートしていくためには、常に情報収集を行い、知識の更新を行う手入れが必要です。
NPhAは研修実施機関として健康サポート薬局研修を運営し、会員・非会員を問わず、より多くの薬剤師が健康サポート薬局研修を受けられるよう、取り組みを推進しております。健康サポート薬局の認定そのものは全国で1,000薬局にようやく届いた状況ではありますが、研修開始以来の申込者数は8,000人を超え、6,000人超の研修修了者を輩出しておりますので、地域住民の薬物治療と健康増進に貢献する知識と意欲を備えた薬局・薬剤師は確実に増えていると考えております。また、姉妹団体である日本薬局学会においては、認知症研修認定薬剤師の育成に注力しております。
以前、「朝日歌壇」入選作品で非常に印象深く感じた短歌がありました。「二十四年費やして得た教職に心を病みて薬飲む日々」という作品です。作者は苦労して教員資格を取ったものの、教育現場の厳しさに心身を壊してしまったのでしょうか、何とももの悲しい歌です。患者さんには、例外なくそれぞれの背景があり、その人を心配している人がいます。こういう患者さんに寄り添い、治療の力となるのが真の医療人ではないかと思います。
制度や要件は常に見直し、修正や転換を重ねています。かかりつけや健康サポートといった制度自体は、方策であって最終的な目的ではなく、目的は「患者のため、地域住民のための」薬局という一点で揺らぐことはありません。求められる知識や能力が多岐に亘る中で、どのような薬剤師、医療人でありたいか、将来像を胸に自己研鑚に取り組んでいただくことを期待しております。