2019年12月
専務理事 浦山隆雄
日本語で書くと長いが、略称NMRである。
大学で配属になった講座が有機化学であったので、NMRは日常的に使用した。学部4年生の時は、まだ100MHzのものしかなく、測定はオペレーターが行っていた。測定依頼には教官の許可が必要だったはずである。大学院生になった年に、400MHzのものが設置された。オペレーターは、この400MHzの方を担当することになり、100MHzの方は大学院生に開放された。NMRの測定チャートは、シャープな線と、水素原子数が積算されて表示され、分かり易くて好きだった。
400MHzの測定装置は、より鮮明な結果が得られるし、微量でも測定可能なので、ありがたかった。その反面、維持管理には手数がかかった。超伝導電磁石を液化窒素で常時冷却する必要があり、その液化窒素は、有機系講座の大学院生が輪番で、隣の建物(応用電気研究所)まで取りに行った。台車に保冷容器を積み、2人一組でごろごろと押していく。容器への注入は、研究所の職員がしてくれたはずだが、またごろごろと持ち帰らなければならない。冬は、道に雪があり、凍って滑りもするので、かなりの手間であった。
医療用に使用される装置の略称はMRIである。原理は同じであるが、用途によって略称が異なっている。基礎的な測定装置が応用されて医療にも使用される。優れた研究・技術というのはそういうものであろう。
薬剤師のレジデント制度というものがある。
この制度に関しては、平成25年度の厚生労働科学研究「6年制薬剤師の輩出を踏まえた薬剤師の生涯学習プログラムに関する研究(研究代表者:乾賢一氏)」の分担研究の一つ「新たな卒後臨床研修制度の構築に関する研究(研究分担者:橋田亨氏)」で、研究成果が示されている。試行錯誤しながら充実に努めてきた当時の状況などが的確に記されており、優れた資料と思う。今年度から、その後継研究が進められている。
高齢化社会に向けた医療提供体制の改革により、病院から在宅への流れが加速されている。在宅医療で薬局薬剤師が役割を果たすためには、病院における多職種の連携状況を身を以て修得することが必要であり、それが地域において薬局が他職種と連携をとって業務を行っていく体制を構築できることに繋がるものと考える。
病院薬剤師、薬局薬剤師と、名称は異なっても、根本は薬剤師である。NMRとMRIが本質は同じでありながら、名称が異なっているのと同じである。できる限り多くの薬剤師が、資格取得直後に、定められた教育プログラムに沿って病院における薬剤師業務を実地に学ぶ。そのうえで、どちらかに特化していくということが、将来の薬剤師の道を切り開くことになるのではないかと思う。レジデント制度がうまく起動するための第一歩として、有用な研究成果を期待したい。