戻る

薬剤師研修支援システム

標準品 

2020年12月

専務理事 浦山隆雄

 

 私が日本薬局方の担当課長補佐になったとき、中央薬事審議会日本薬局方部会長の内山充先生(国立衛生試験所副所長)から、「日本薬局方に収載している医薬品の定量法は滴定法が多い。これを液体クロマトグラフィーを用いた方法にしていかないと、世界の趨勢に遅れる。液体クロマトグラフィーを採用するには標準品が必要で、それを現在のように国立衛生試験所で頒布しているようでは、数を増やせない。財団法人などで日本薬局方標準品を販売できるようにすべきである。」との指示があった。国立衛生試験所は分析業務を受託できることから、それによって標準品の品質を保証したうえで、販売団体が販売するということであった。

 平成3年4月に施行された第十二改正日本薬局方で、新たに液体クロマトグラフィーを採用できたのは、それほど多くはなかったものの、何品目かの標準品を財団法人日本公定書協会で販売できるようになり、定量法の改定もできることとなった。今では、制度も整えられ(日本薬局方標準品を製造する者の登録に関する省令)、数多くの標準品が販売されている。定量法に液体クロマトグラフィーが採用されている日本薬局方収載品も多い。

 薬剤師の生涯研修に、標準となるものは必要だろうか。

 生涯研修は自己研鑽であるから、自分自身で学ぶ必要のあるものを選択し、学び、振り返ってみて不足分を探し出す。そしてその不足分を学ぶ。本来はその繰り返しであろう。それを手助けするために、当財団では「薬剤師生涯研修の指標項目」を定めている。しかし、薬剤師の数が増えるにつれて、みんなが自分自身で、というのが難しくなってはいないだろうか。必須の学習科目を設ける、標準的な履修科目を設ける、専門薬剤師に繋がる科目を定める、といったことを考えていかなければならないのではないだろうか。

 現在、当財団では、薬剤師研修・認定電子システムの構築を進めている。書面で行っている各種の手続きや研修の受講管理を、電子的な方法によって行うものである。電子化によって省力化できた分、薬剤師の研修のあり方の検討、研修内容や項目の精査などに注力していくことができるであろう。

 今年7月から始まった厚生労働省の「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」においては、議題の一つとして「薬剤師の資質向上に関する事項」が取り上げられ、また、日本学術会議薬学委員会からは、提言「持続可能な医療を担う薬剤師の職能と生涯研鑽」が今年9月に出されている。

 現在の状況を根本から見直し、次の時代の薬剤師研修のあり方を、みんなで考えていく時期にきていると思う。

(注:文章中の組織名や役職名は当時のものです。)