2021年5月
一般財団法人医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団 理事長 中垣 俊郎
「かかりつけ薬剤師・薬局を決めている人」は7.6%、「薬局は一つに決めているが、かかりつけ薬剤師は決めていない人」が18.4%という内閣府世論調査の結果が公表されました。また、6年制移行後10年を経たが学生の学力は向上していないとの指摘が厚労省の検討会であった旨報道されました。
薬剤師、薬局については、いろいろな議論があるものの、新しい時代におけるあり様を示すかのように、令和元年12月、法改正が行われました。薬剤師法改正では、調剤時に加え、薬剤の手交後においても、服薬状況等をフォローアップし、薬学的指導を行う義務等が新たに設けられました。さらに、一定の条件付きではありますが、テレビ電話等による服薬指導も規定されました。医薬品医療機器等法の改正では、「入退院時の医療機関との情報連携や在宅医療における地域薬局との連携に対応する地域連携薬局」と「がん等の専門的な薬学管理に関係機関と連携して対応する専門医療機関連携薬局」の2つに知事認定制度が導入されました。
新しいモダリティ、標的を利用した新薬が次々と医療現場に出てくる中で、調剤や指導に必要な知識・技術も飛躍的に増加し、すべての薬剤、領域をカバーすることは難しくなりつつあります。令和新時代の薬剤師・薬局は、専門医制度や医療計画によって医師・医療機関が専門分化したように、各々が専門とする分野・領域に集中し、お互いに分担・連携しながら、患者の薬物治療を支えるという方向に向かうのではないでしょうか。
それに必須なのは、大学における教育とその後の自己研鑽です。新しい薬剤に追いついていくだけでも大変です。それをどのように調剤し、どのような指導を行うか、課題はつきません。テレビ電話による指導にも創意工夫が必要です。
忘れてならないのは、令和とともに始まった新型コロナウイルス感染症の拡大、パンデミック時における薬剤師のあり様です。的確な薬物治療の実践、薬局における感染防止のほか、手洗いや消毒剤に関する住民からの相談応需、公衆衛生指導も期待されています。
このような変革の時こそ、若い世代の方々にとって大きなチャンスです。令和という新しい時代が、患者や地域住民に寄り添い、信頼される薬剤師の時代となるよう、若い方々の活躍に期待しています。