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薬剤師研修支援システム

 後発医薬品と医薬分業 

2021年6月

厚生労働省 保険局 医療課 薬剤管理官 紀平 哲也

 

  2021年に入って、後発医薬品の製造販売業者が製造違反により業務停止処分を受ける事例が続き、後発医薬品の信頼性の問題が取り沙汰されています。後発医薬品の品質については、使用促進を始めた当初から心配の声があったところ、数量目標80%に届こうというところまで後発医薬品の使用が進んできたことは、医師・薬剤師をはじめとする関係者のご理解とご尽力によるものと思います。そうした中、後発医薬品の信頼性を損ないかねない事案が相次いで生じたことから、あらためて後発医薬品の製造・供給体制について見直す必要があるとの意見が出ています。

 今般の製造違反の問題が、いわゆる化血研問題を経てもなお長年続けられてきていたということは、製造販売業・製造業の許可やGMP調査を担当している行政にとっても考え直させられる問題です。また、製造違反を続けてきた背景として、後発医薬品の使用促進に伴う需要増に応えるためとの声もありますが、「量」を確保するために「質」がないがしろにされてきた、と見なされても致し方ない状況です。

 ここでふと、どこかで似たような話を聞いたことがあるような気がしないでしょうか。

 医薬分業が進められ、処方箋受取率(いわゆる医薬分業率)が約70%超まで進んできた中で、薬局・薬剤師のあり方についてあらためて問われたのが6年前。「患者のための薬局ビジョン」が策定され、「対物業務から対人業務へ」と薬局薬剤師の意識と業務のあり方の変革を進めようとされてきた中、無資格調剤や処方箋付替え問題、偽造薬の購入・調剤など、薬局の信頼性を損ないかねない事案が続きました。医薬分業の推進により増え続けてきた処方箋の「量」に対応する状況は終わり、「質」の確保・向上が求められている薬局薬剤師の状況は、後発医薬品の置かれている状況と相通じるところがあるのかもしれません。

 これらの問題の再発防止に向けて、コンプライアンス(法令遵守)とガバナンス(管理)の強化の徹底が求められています。本年8月に施行される改正薬機法においても、製造販売業者及び薬局開設者それぞれにおいて法令遵守体制の整備等が求められます。しかし、コンプライアンスとは本来、法令の遵守だけでなく、社会規範や倫理の遵守が求められるものです。法令や調剤報酬に従えばいいということではなく、医療資格者たる薬剤師にとっての職業倫理とは何かをあらためて自ら問い直し、日々の業務と自己の研鑽に取り組むことが、顧客からの信頼を得るために必要なことではないかと思います。