2021年7月
公益社団法人日本薬学会 会頭 佐々木茂貴
本年度より日本薬学会会頭に就任しました佐々木でございます。長井長義初代会頭に始まる伝統ある学会の舵取りという重責を感じております。学会運営とともに、薬学の発展に努力して参りますので、何卒宜しくお願いいたします。貴日本薬剤師研修センターの、薬剤師の生涯学習に対する長年のご貢献に、敬意を表します。日本薬学会第141年会は広島で開催予定でしたが、オンライン開催に変更になりました。貴センターには研修シールの発行をお認めいただくなど、柔軟なご対応に感謝申し上げます。
2020年1月に武漢から広がった新型コロナウイルス感染症COVID-19は、1年以上たった今日でも収束していません。インドでの悲惨な状況が報道される一方、ワクチン接種が進んだイギリスや、ニューヨークでの感染者数の激減は、克服への希望を与えています。アメリカのドラッグストアで薬剤師がワクチン接種している報道を見ますと、接種する医療従事者不足で混乱しているわが国の様子と対比し、色々と考えさせられます。
現在、わが国で接種が進んでいるファイザー社の新型コロナワクチンは人類史上初のmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンですが、承認の速さと有効性の高さは驚きをもって受け止められています。急に登場した技術のように見えますが、20年以上にもおよぶ基礎研究の賜物です。他にも医療に革新をもたらす可能性のある基礎研究は、確実に継続されています。革新技術も、mRNAワクチンのようにすぐに身近なものになり、薬剤師の日常の業務に組み込まれていくものと想像されます。急激な変革への積極的な取り組みは薬剤師の生涯学習の目的の一つとされています。日本薬学会は最新の薬物治療に関する学術情報を速やかに収集し発信する体制を整え、薬剤師の先生方の生涯学習に活用いただけるよう、研鑽に努めて参ります。
今般の感染症対応の医療現場で見られますように、薬剤師には様々な課題を見出し、解決する科学力が求められます。科学的探究心の育成には大学での研究体験が重要な意義を持ちますので、薬学会は薬剤師の皆様と大学との連携に取り組んでいます。薬学会年会、支部大会、各種学術集会および学術誌などは、薬学生ならびに薬剤師の研究発表の場であり、自己研鑽の場でもあります。皆様にはこのような学術活動をご支援いただき、また積極的にご活用していただきますよう、宜しくお願い致します。