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薬剤師研修支援システム

 デジタル社会における薬剤師の価値 

2022年3月

     厚生労働省医薬・生活衛生局総務課 薬事企画官 太田美紀

 

  新型コロナウイルスの感染拡大によって急速にオンライン化が進んでいます。それは、医療の分野も同様で、オンライン診療・オンライン服薬指導については、コロナ禍における時限的、特例的な措置を踏まえ、恒久的な制度の見直しが検討されています。また、データヘルス改革により、様々な医療情報が一元的に閲覧・利用可能となるシステムの構築も進められており、来年1月には電子処方箋の導入によるリアルタイムの処方・調剤情報の共有が開始される予定です。一方で、調剤機器の進化やAIの発展により、薬剤の取り揃えやその監査、重複投与や単純な併用禁忌等の確認は、一部代替可能となる将来も予測されています。

 そうした変化の渦中において、「今後、薬剤師に求められるものは何でしょうか?」私自身もまだ完全な正解にはたどりついていないですが、確実にあげられるのは、「対物から対人へ」のメッセージにもあるように、高度な薬学の知識に基づく患者さんとのコミュニケーションだと思います。

 今回の薬機法改正により調剤後のフォローアップが義務づけられました。 フォローアップとは、患者さん一律に実施するものではなく、服用している薬剤の特性や服薬状況、さらには日常生活の状況等に応じて、その必要性を個別に判断した上で対応するものでなくてはなりません。

「そのために必要なものは何か」最新の医療・医薬品に関する知識はもちろんのこと、それに加えて関連の幅広い知識が必要です。栄養や運動等の生活習慣に関する知識、介護や医療等制度に関する知識、さらには、関連の職種・施設との連携も重要です。

 今後も新薬が次々と開発され、薬物療法自体も複雑化・高度化が進む中、薬の専門家としての薬剤師の役割は確実に重要なものとなってくるでしょう。

 情報の入手という点では、添付文書の電子化やデータヘルス改革等、薬剤師が活用できる様々な情報へのアクセスが容易になっていきます。これらの情報を個々の患者さんとのコミュニケーションから得た情報と併せて活用し、いかに患者さんにアウトプットしていくか、薬剤師の腕の見せ所です。

 オンライン化が進むことにより、薬局の選択も「立地重視」から「サービス内容重視」に変化していくと思われます。信頼できる薬剤師が選ばれていく時代が到来します。地域の中で患者に寄り添い、患者の薬物療法に責任をもって対応することで互いに信頼関係を築きながら、地域住民の健康を守っていく存在として御活躍いただくことを期待しております。