2023年1月
理事長 豊島 聰
近年、コロナウイルス感染症が蔓延し、我々の暮らしに大きな影響が出ました。例えば、会議の開催が対面ではなくWEBシステムを使用して行われることが多くなりました。WEBでは、映像と音声での会話となりますが、対面とは異なり微妙にコミュニケーションが取りにくくなったことを感じます。現在は、これを一例とする社会的影響を押さえるためwith coronaという対応がとられるようになりました。これには、従来により近い社会生活を送れるようになるという大きなメリットがあります。一方、これには感染の拡大とそれに伴う重症患者の増加の可能性が高くなるなどのデメリットがあります。with coronaへの移行が可能となった理由としては、ワクチン接種の促進、マスク着用の励行、3密回避の励行や医療環境の整備などデメリットを抑える方策が取られてきたことが大きいと考えられます。また、コロナウイルスの変異はかなり早いのですが、変異に伴い感染力は強くなることに比べ、重症化のリスクは減少することもデメリットの抑制に大きく影響しました。
ところで、近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)の活用の重要性が認識されてきました。その活用にあたってもメリットとデメリットを十分分析してデメリットを最小化することが重要と思います。薬剤師もモノからヒトへという社会的要請のなかで、デジタル技術の活用の重要性が増してきています。デジタル化対応が苦手という薬剤師もいると思いますが、デジタル化への対応は必須となってきています。
デジタル化にもメリット・デメリットがあります。例えば、服薬指導のオンライン化では、患者本人の身体の状態や生活の状況を映像で確認できるという大きなメリットがあります。また、服薬期間中に指導が必要な場合も映像を見ながらの対応ができます。当然、薬局までの移動時間や調剤の待ち時間は短縮されます。一方、対面によるコミュニケーションに比べオンラインでのコミュニケーションには、微妙に得られる情報に限りがありますが、そのなかで、実際の薬剤を目の前にしての説明を行えないなどのデメリットが考えられます。しかし、薬剤師の対人業務の推進には、調剤時から服薬後のフォローアップ、健康相談、セルフケアのサポートなど継続的なケアが必要ですので、デメリットを最小化して、デジタル技術を効果的に活用していくことがこれからは重要と考えます。