2023年9月
公益財団法人 日本薬剤師研修センター 理事長 矢守 隆夫
この度、日本薬剤師研修センター理事長に就任いたしました。この機会に当財団の歩みを振り返るとともに、これから目指すビジョンについて申し述べたいと思います。
薬剤師とは、大学の薬学部を卒業し、薬剤師国家試験に合格した者に与えられる資格です。薬剤師は、「薬」の専門家として、薬局や医療機関で処方せんに基づく調剤や患者への服薬説明を行うほか、薬の販売や薬に関する相談に携わる医療従事者です。近年の医療の進歩には目を見張るものがありますが、医療が高度化すると共に薬剤師に対してより優れた知識と経験を求める社会的要請が生じて参りました。その実現には、個々の薬剤師が自らのレベルアップを志し自己研鑽を重ねること、すなわち薬剤師の生涯学習が必要です。
当財団は、薬剤師の生涯学習のための環境を整備し、生涯学習を支援・推進する組織として1989年に当時の厚生省の認可のもとに設立されました。そして、1994年に当財団は、その基幹事業として「研修認定薬剤師制度」をスタートしました。これは、薬剤師免許を持つに相応しい資質を維持するための生涯学習を支援し、その成果を認定するための制度です。この制度は、かかりつけ薬剤師制度(2016年制定)における「かかりつけ薬剤師」の要件の一つに「研修認定の取得」が明記されたことによって薬剤師への認知度が一挙に高まりました。続いて、専門性の高い薬剤師を養成する見地から、新たな認定薬剤師制度として、2000年には「漢方薬・生薬認定薬剤師制度」を、また2012年には「小児薬物療法認定薬剤師制度」をスタートさせました。さらに昨年4月からは、これらの認定業務の効率化を目標とした認定申請の電子化システム(薬剤師研修・認定電子システム:PECS)を稼働させました。このように、「研修認定」、「漢方薬・生薬認定」、「小児薬物療法認定」という3つの認定制度の運用を主な柱として、当財団は薬剤師の生涯学習を支援して参りました。
これらの実績を踏まえ、今後の課題として、まず重要なのは生涯学習を支援するためにより質の高い、よりUp-to-dateな内容の研修を提供してゆくことです。また、認定申請プロセスについては、PECSをよりよく使いやすくするためのバージョンアップや、申請者から見てわかりやすい標準手順書を作成するなど、申請者の便宜を図ることにも注力したいと考えております。各方面のご理解、ご支援をお願いいたします。