戻る

薬剤師研修支援システム

医薬品産業の転換への動き 

2024年7月

公益社団法人 東京医薬品工業協会 理事長 成田昌稔

 

 コロナ感染症は、感染症法上の5類への移行から1年が過ぎ、私たちの生活もやっと落ち着きをとりもどしたところです。コロナ禍において、治療薬やワクチンの早期開発など、医薬品に大きな期待が寄せられているところですが、一方、医薬品の品質やGMPに係る事案、ニトロソアミンの混入問題、サプライチェーンの脆弱性などについては、より顕在化し、多くの医薬品の出荷制限が継続するなど医薬品の供給の確保について、薬剤師の皆さんに負担をおかけしている状況です。医療用後発品の安定供給問題は、GMP等の法令の遵守、企業ガバナンス、企業カルチャーの醸成等の他、少量多品目生産となっている産業構造など、多くの要因が指摘されており解決は容易ではありません。さらに、医薬品産業について、創薬力の強化、ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスの解消、適切な流通など大きな課題が提起されています。

 

 このような医薬品産業に係る多様な課題の解決に向けて、厚生科学審議会、中医協、各種の検討会において、産業構造、薬事や薬価制度などについて医薬品医療機器等法などの法改正も含めた抜本的な改革の議論が進んでいます。

 

 様々な課題を議論し対応していくには、原点に戻って考えることが肝要であり、例えば、品質事案では、次のような事項の再確認が重要です。

  • 医薬品産業の使命は、有効で安全な医薬品を創出すること、高品質な医薬品を恒常的に製造し安定供給すること。
  • 高品質な医薬品は、臨床試験で得られた臨床効果を示すことができる薬剤であり、そのために品質保証が行われること。
  • 品質は、規格と製造管理により保証され、GMPにより担保されること。
  • GMP(3原則)、データインテグリティ(ALCOA+)等の考え方を理解すること。
  •   など

 

 日本には約32万人の薬剤師(令和4年末現在、薬剤師法に基づく届出より)がいます。所属する施設順にみると、薬局に19万人、医療施設に6万人、製薬企業に2万6千人の薬剤師が勤務しています。今まさに、医薬品産業の転換点となる大きな動きが進んでいます。医薬品の今後に大いに関わることであり、製薬企業に所属する方だけでなく、薬局、病院薬剤師の皆さんも共に注視していきましょう。

 医薬品業界の大転換へにつながることを期待したいと思います。