戻る

薬剤師研修支援システム

大人な薬剤師 

2024年11月

公益社団法人日本薬剤師会 会長 岩月 進

 

 身だしなみを気にするなんて、男らしくない。そんな風に思うひともいるだろう。けれども身だしなみというものは、周囲へのリスペクトでもある。

 周囲へのリスペクト、それはもちろん、身だしなみばかりではない。たとえば脱いだ下着を、洗濯機に入れるときの、妻の心情を慮れる男は素敵だ。レストランで、皿に残った食べ残しを始末する店員の気持ちを思いやれる心は粋である。仰ぎ見てくる子どもの目に、どう映りたいのか考えてくれるパパがいい。避けるべきは“なにも考えない”ことかもしれない。朝、あるものを、着てきた。そんなに臭くない。まだいける。白か灰色か覚えていない。そんな加点も減点もないモノクロな世界に、美しいだれかとのロマンスは生まれない。

 これは、慶應義塾大学講師の長谷川悠里氏のエッセイから教わった話。

 薬剤師という職業に就いたからには、生涯にわたって学習し、自己を高めてゆくことに意識を持たない人はいないと思う。

 より良い薬剤師というのは、誰にとってのメリットなのか。職業人として自己を成長させ、その能力を顧客や地域に還元してゆくことが生涯にわたる研鑽の目的であろう。

 研鑽には、観察力と創造力がきっかけとなろうが、そのうえで、第一に必要なのは、強い意志ではないか。疾病のある方の気持ちを汲み取り、その方にとって最適な医薬品を提供させていただくためには、何よりも任務遂行に必要な強い意志を持つことは重要であろう。 

 二番目は、テクニカルなスキル。疾病や医薬品の知識は言うに及ばず、介護や療養や栄養や生活環境など多岐にわたる知識も必要だ。昨今の医薬品供給不安においても、医薬品産業や流通業の知識の有無によってその対応は異なるであろう事は容易に想像できる。

 そして、三番目に必要なのがコミュニケーションスキルであるといわれている。患者さんとの会話のみならず、関連する多職種の方々との意思の疎通は仕事の質に直結するのではないだろうか。

 これらの三要素をバランスよく学び、周囲へのリスペクトを忘れない「大人」の薬剤師を目指してゆけたらと思う今日この頃である。

 日本薬剤師会は、このような意志とスキルを持って、地域とそこに生活されている方々に役立つ薬剤師の集団でありたいと願っています。