2025年6月
一般社団法人日本生薬学会 会長 市瀬 浩志
薬剤師養成教育の根幹をなす薬学教育モデル・コア・カリキュラム(以下、MCC)は2回目の改訂を終え、2024年度入学者から「令和4年度改訂MCC」が適用されています。「未来の社会や地域を見据え、多様な場や人をつなぎ活躍できる医療人の養成」をキャッチフレーズに、少子超高齢化が進む2040年以降の社会を想定した新MCC(以下、MCC3)は、初版(MCC1:2006~14年度入学)、2版(MCC2:2015~23年度入学)とは大きく異なっています。
顕著な変更点として、MCC2までの「薬学臨床」からMCC3では「臨床薬学」になった点があります。薬局・病院における各11週ずつの実務実習(標準実習)の終了後に各大学が行う卒業に向けた、実習内容の深化・一般化を目途とする学修を実施することまでを含めて「臨床薬学」という教育体制とすることになりました。更に臨床の実践的な能力の更なる向上を図るために追加で行う実習(薬学実践実習)を選択性として実施する方針が、(一社)薬学教育協議会より(「臨床における実務実習に関するガイドライン」に対する対応について、令和7年2月3日)示されました。この中では、実習内容を指定した特定の医療提供施設として、漢方相談薬局が例示されています。
日本生薬学会は2000年4月より日本薬剤師研修センターとの協力体制で「漢方薬・生薬認定薬剤師制度」を開始しました。漢方薬・生薬に関する専門的知識を修得し、能力と適性を備えた薬剤師であることを認定する制度です。認定薬剤師になるには、漢方薬・生薬研修会への参加と薬用植物園実習ならびに試問に合格する必要があります。認定により、患者や医師をはじめとした医療従事者に自信を持って漢方薬・生薬に関する情報提供ができますし、「漢方薬・生薬認定薬剤師」であることを、認定証掲示やIDカード着装により、患者や他の医療従事者にアピールすることも可能です。
本研修制度開始以来、延べ9,000名以上の方が認定を受け、毎年の研修受講者は約500名に達します(2025年3月31日現在の有効認定者数:3,621名)。認定更新に必要な研修には、日本生薬学会及び同学会各支部ほか関連する各学会が主催する最新、かつ、実践的な内容が含まれますので、日常的な漢方薬の取扱いが必須である場合はもとより、様々な医薬品の服薬指導や適正取扱いに関わる職能向上に確実に寄与するものと確信しています。
新しい薬剤師教育制度でも注目されていることもふまえ、今後も多くの方々に「漢方薬・生薬認定薬剤師制度」を活用していただければ幸いです。