2025年8月
公益社団法人日本薬学会 会頭
石井伊都子
2025年4月より日本薬学会会頭を拝命いたしました。今年で145年を迎える日本薬学会は、「くすり」に関係する研究者や技術者が、学術上の情報交換を行い、学術文化の発展を目的とする学術団体です。
今、私たち薬剤師はどのような職種として理解されているかと考えたことはありますか。一般の方や他の医療職に薬剤師はどのように映っているのか、薬剤師教育が4年制から6年制になったことが、結果として社会の利益になっているか、ここで考えてみたいと思います。
m3.comが2019年に行ったアンケート調査によると、薬剤師のイメージは、第3位「まじめ」、第2位「堅実」、 第1位「年齢や性別に関わらず活躍できそう」でした。その一方で、悪いイメージ関する調査によると、調査対象の約半数の患者が嫌な思いをしており、その大きな理由が「もう少し頼りになってほしい!」、「デリカシーのない言動やぞんざいな態度がつらい」と、この二つが主たる理由でした(https://pharmacist.m3.com/column/impression/660及び836)。長所で真面目と受け止められながらも、短所で知識不足を指摘されています。確かに、薬学部生は総じて真面目な性格の持ち主です。では、どうして、社会に出ると頼りなくなってしまうのでしょうか。
医師は卒後研修が義務化され、研修しないと保険医になれないことがルール化されています。看護師は努力義務として位置付けられ、2011年に厚生労働省から新人看護職員研修ガイドラインが発出されました。一方、薬剤師に関しては、2024年3月に漸く「薬剤師臨床研修ガイドライン」が厚生労働省から発出されました。すでに認定・専門薬剤師制度は複数走っておりますが、肝腎な卒業直後における研修の指針が明示されていなかったことは、薬剤師の成長チャンスを奪っていたのでないか、と今更ながらに反省することしかりです。いくら真面目でも、制度や指針が無ければ、積極的に継続する学習ことには限界があります。
上記のような中で、日本薬剤師研修センターは、薬剤師が積極的に自己研鑽できるよう、各種研修会の開催、研修認定薬剤師等の認定、学習用の書籍・教材の刊行等を行なって下さっています。大変ありがたいことです。薬剤師の仕事は、薬学と言う学問の上に成り立っています。どの疾病の領域でも薬物治療は日進月歩であり、常に情報をアップデートする必要があります。日本薬学会は10部会を学術的構成単位とし、その活動をどの地域においても展開できるようにするため地域として8支部にて展開しています。日本薬学会で最新の情報を得ながら、日本薬剤師研修センターを活用し研修を受け認定取得に励むことが、時代をリードする薬剤師としての第一歩と考えます。