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いわゆる「健康食品」と薬剤師 

2025年11月

国立医薬品食品衛生研究所 
所長 齋藤 嘉朗

 

 令和6年に発生した機能性表示食品による健康被害の事例は、皆様のご記憶に新しいところかと思います。弊所は、厚生労働省と連携して、問題となった製品の分析や原因物質とされるプベルル酸の毒性評価等、その原因究明に寄与して参りました。その過程や過去に携わった「いわゆる「健康食品」に関するメッセージ(2015年12月、食品安全委員会・いわゆる「健康食品」の検討に関するワーキンググループ)」での経験から、今後、いわゆる健康食品による健康被害を起こさないためにはどうしたらよいか、皆様と考えたいと思います。

 まず令和6年の事例で問題になったのは「紅麹含有の機能性表示食品」でしたが、「紅麹エキス」がこの健康被害を起こしたわけではなく、混入していた青カビがプベルル酸を産生したことに起因すると考えられております。このため機能性表示食品や特定保健用食品に関して、製造工程管理による製品の品質確保を徹底する観点から、令和8年9月より、天然抽出物等を原材料とする錠剤、カプセル剤等食品の届出に関する製造加工等におけるGMP基準の適用が実施されます。また、これらの健康食品に関して、同じ所見の症例が短期間で複数発生した場合や医師が重篤と判断した症例に関し、届け出等事業者から都道府県知事等への健康被害報告が令和6年9月より義務化されました。

 機能性表示食品や特定保健用食品を含む“いわゆる「健康食品」”は、病気の方が摂取されるケースも多いことが報告されています。“いわゆる「健康食品」”の中には、医薬品との相互作用を起こすものも知られておりますが、患者さんは健康食品の摂取を医師や薬剤師の先生に伝えていない場合も多いとされております。患者さんが最も相談しやすい医療関係者である薬剤師の先生方におかれましては、是非、機能性表示食品等を含めた“いわゆる「健康食品」”に関し、典型的な医薬品との相互作用例や過剰摂取により起こりうる有害事象に関して知識を身につけ、患者の皆様の相談に乗っていただけますと幸いです。弊所も今後、論文や海外事例を含め、エビデンスが蓄積した情報に関しては、どのように先生方医療関係者に提供することが適切かを検討し、先生方のお役にたつ情報を発信できればと考えております。