2026年2月
国立成育医療研究センター研究開発監理部 開発企画主幹
日本小児臨床薬理学会 薬事委員長
中村 秀文
小児は「小さな大人」ではないと言われます。薬物動態の成長・発達による変化により、年齢によって投与量が変わる薬が多いですし、小児特有の有害事象も知られています。例えば、テトラサイクリンによる歯牙黄染や、クロラムフェニコールによる灰白症候群などは小児特有ですし、バルプロ酸による肝障害は2歳以下の多剤併用例で頻度が高いことが知られています。小児に対しては成人用のカプセルや錠剤を粉砕・分包して投与しているものも多く、特にハイリスク薬では調剤過程での曝露・コンタミネーション対策も不可欠で、その服薬指導にも配慮が必要です。服薬管理は成人よりも複雑であり、年少児に対する処方の際には、保護者への説明も必須となりますし、思春期の子どもたちにはアドヒアランスへの配慮が必要となるでしょう。
日本小児臨床薬理学会学術集会での発表では、服薬指導における様々な支援・取り組み、また保護者と子どもと両方が服薬をしているような状況で、在宅医療の関係者とも連携して薬剤師が中心となって服薬環境を整える試みの紹介、などが行われています。小児科医は診断や薬の選択については詳しいでしょうが、薬物動態の成長・発達による変化や薬物相互作用等について詳しく理解している医師は極めて限られていますし、服薬の細かい指導を出来る医師はほとんどいないことと思います。薬剤師の皆さんは薬の専門家として、子どもと家族に寄り添い、薬についてのさまざまの助言・指導が出来る立場であると感じております。
日本薬剤師研修センターと日本小児臨床薬理学会は平成24年度から「小児薬物療法認定薬剤師制度」を創設し、小児薬物療法薬剤師の研修と認定を行っています。令和6年度からは、「専門医療機関連携薬局」の傷病区分について「小児(疾病)」へ拡大する方向性が厚生労働省から示され、地域連携薬局やかかりつけ薬局との具体的役割についての議論も始まっています。小児医療が複雑化する中、薬剤師の小児薬物療法における役割は高まっています。
薬剤師の皆様には是非、小児の薬物療法について専門的な知識を習得し、より良い薬物療法に貢献して頂ければと願っております。